神田佳子作曲: 相撲組曲「Xe」〜2台のピアノのための (2017)プログラムノート別添
音が鳴る瞬間(神田的には、「音、生まれる」瞬間)に立ち会えるのが、本当に幸せです。
この度、両国門天場所(芸術監督の鶴見幸代さん)にて、スペシャリストの高橋アキさん、寺嶋陸也さんのお二人に演奏していただけることに感謝しております。
お二人とも心底お相撲好きなので、共有できることが沢山あり、相撲の音をイメージして真剣に取り組んでくださり、
リハーサルも貴重な時間でした。
相撲、稀勢の里をキーワードにして、この作品を創っている時、次から次々へとアイディアが生まれましたが、
今回は、その中から厳選した要素を組曲(7楽章)としてまとめました。
稀勢の里への想いももちろん沢山詰まっていますが、相撲を追求すればするほど、相撲には日本の文化、伝統、心が凝縮されていると改めて思いました。
本番は明日8月3日ですが、
プログラムノートに書き切れなかった各楽章の想いはこちらにアップしました。
◎神田佳子作曲: 相撲組曲「Xe」〜2台のピアノのための (2017)
■一 壁と孤独と
身体の隅々まで神経を張り詰め、精神を統一しながら一音一音奏でることで、孤独に戦う力士を表現。
取組前、壁に向かって集中する稀勢の里と、その行く手に立ちはだかる壁を思い浮かべながら。
■二 先代の教え 〜重圧に負けるな 弱音を吐くな
先代鳴戸親方は角界一の厳しい親方。
「土俵の上は人生の縮図」「土俵際が面白い」「孤独になれ」という教えも有名ですが、
「奥歯をかんでいる気持ちでやらないとダメだよ。
勝負の分かれ目の俵で“あ”って声出すのは、弱い音だよ。
弱音っていうんだよ。」という言葉も残っています。
最後は、弱音を吐きそうになる「萩原」時代の稀勢の里に、先代師匠からの喝。
■三 愚直な相撲道
真面目でぶれない稀勢の里が、
純粋な心を持ち相撲道を邁進する姿を表現。
神事から生まれた相撲ならではの神聖な気持ちになるような音楽。
■四 猛稽古〜努力で天才に勝ちます
無酸素運動でひたすら限界を超えてまで行う稽古。
「努力で天才に勝ちます」は稀勢の里が中学の文集に書いた言葉です。
スピード感のあるフレーズを、頭打ちにならないようにアクセントを置くことで、
より突進していく力を増しました。
■五 心技体の歯車
歯車があわずもやもやした気持ちを落ち着かせ、瞑想していくように。
シンプルなオスティナートの中に入る複雑な連符は、心の揺らぎを表しています。
準優勝12回でも、なかなか結果の出せない稀勢の里を応援しているファンの気持ちも入っています。
歳月がかかるもついに心技体の歯車が噛み合っていく様子を短くまとめました。
■六 立ち合い 〜強烈なおっつけ
冒頭は柏手を打ち、鍵盤の上を拳で構える。
ピアノの音と音の出会いと、相撲の立ち合いの集中力、緊張感には、
似たようなものを感じます。
取り組み中の駆け引きあり。投げ合いあり。
土俵際まで攻め合いながら、ガチンコ勝負。
後半の高音への駆け上がりは、得意の「左おっつけ」のイメージ。
■七 綱の重み
相撲の「はね太鼓」の最後の部分のリズムから始まりますが、
そのリズムをピアノでダイナミックに表現し、みんなの期待、1500年以上の相撲の歴史重み、
優勝、そして横綱昇進の歓声を重ねています。
はね太鼓は「打ち出し後、てんでんばらばらにお客さんが散っていく様子」を
表現しますが、あの平成二十九年大相撲初場所十四日目の稀勢の里の初優勝決定後は、どれだけ盛り上がったことか。
そして、横綱土俵入り「雲竜型」の攻めと守りを意識しながら、
心を鎮め、これからも相撲道を邁進し続ける姿で、曲は終わります。
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